地の底でゆっくり冷え固まる花崗岩や、長い年月をかけて圧力と熱を受けて生まれる大理石とは違い、 溶岩石は火山が地表へ噴き出した溶岩が冷え固まって生まれた石です。
イタリアの「死にゆく町」から、地球の海の底、そして世界中の石が行き交う中国・厦門(アモイ)まで。
一つの「火」から枝分かれしていく、三つの黒い石の物語をまとめました。
この特集でわかること
- 同じ火山が、御影石に匹敵する耐久性を持つ溶岩石と、崩れ続ける凝灰岩を同時に生み出した理由
- 玄武岩が海洋地殻をつくり、地球の表面を最も広く覆う石であること
- ジャイアンツ・コーズウェイの六角柱が、なぜ「巨人の石道」と信じられたのか
- 「tea」という言葉が世界へ広まった港・厦門(アモイ)が、いま世界有数の石材集積地となっていること
- 「バサルト」と呼ばれる石が、必ずしも地質学上の玄武岩とは限らない理由
第94話
バサルティーナと、死にゆく町
イタリア中部ヴィテルボ県で採れる灰色の溶岩石、バサルティーナ。
その石を生んだヴルシーニ火山は、御影石に匹敵する耐久性を持つ溶岩石と、侵食によって崩れ続ける凝灰岩の台地、その上に築かれた「死にゆく町」チヴィタ・ディ・バーニョレージョを同時に生み出しました。
一つの火山が生んだ、耐久と消滅という二つの運命。そして市場では「玄武岩」と呼ばれながら、地質学的には別の岩石であるという、石の名前の不思議もたどります。

第95話
バサルトブラックと、海の底の石
北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェイ。
四万本もの六角柱は、巨人ではなく、冷えゆく溶岩が生み出した自然の造形でした。
そして、その玄武岩こそが海洋地殻をつくり、地球の表面を最も広く覆う、もっともありふれ、もっとも根源的な石です。
月に見える黒い「海」もまた玄武岩。世界をつくる材料は、派手ではなく、静かな黒い石でした。

第96話(最終話)
ボルカニックブラックと、世界の石が集まる港
英語の「tea」という言葉が海を渡って世界へ広まった港、福建省・厦門(アモイ)。
明代の砦として築かれ、開港、経済特区を経て、数百年にわたり「世界への門」であり続けたこの港は、いまでは世界中の天然石が集まり、加工され、再び世界へ送り出される場所となっています。
火山で生まれた黒い石が、人の手を経て、世界中の建築へ届けられるまでの最後の旅をたどります。

火は、地表に硬い溶岩を残し、地下で湯を沸かして石を育て、そして脆い足場を崩します。
海の底をつくり、月を染め、やがて海を渡って、私たちの足元の一枚のタイルになる。
「火が生んだ石」をめぐる、三つの黒い石の物語です。
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