戦闘機を隠す地下工場になり、
観音が彫られ、
教会となり、
蔵となり、
そして現代の建築へ。
栃木県宇都宮市の地下に眠る灰緑色の凝灰岩「大谷石」。
約1500万年前の海底火山から生まれたこの石は、日本の近代建築、戦争、信仰、そして暮らしの歴史と深く結びついてきました。
この特集では、大谷石が歩んできた物語を全7話で辿ります。

大谷石(おおやいし)
栃木県宇都宮市大谷町周辺で採れる凝灰岩。
柔らかく加工しやすい一方、耐火性や調湿性に優れ、日本を代表する建築石材として100年以上使われ続けています。
この特集でわかること
・フランク・ロイド・ライトが帝国ホテルに大谷石を選んだ理由
・関東大震災で帝国ホテルが倒壊を免れた背景
・70年かけて掘られた巨大地下採掘場の歴史
・戦闘機工場・米倉庫・コンサートホールへと姿を変えた地下空間
・宇都宮空襲で証明された大谷石の耐火性
・大谷観音と平和観音に受け継がれた一万年以上の祈り
・大谷石で建てられた日本最大級の石造教会
・関東平野に広がった石蔵文化とその終焉
・調湿性や熟成効果など、現代建築で再評価される理由

大谷石 全7話
第75話〜第81話 | 所要時間:約20〜30分
大谷石と、地震に勝ったホテル、フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル 「ホテルは無傷で立っています」
関東大震災の翌日、ライトのもとに届いた電報が、帝国ホテルと大谷石を一夜にして伝説にした。泥の上に浮かせる発想の逆転と、多孔質な石が衝撃を吸収する仕組み。

大谷石と、地下に眠る巨大神殿 1919年から70年かけて掘られた、野球場がすっぽり入る地下空間。戦時中は戦闘機「疾風」の地下工場、戦後は古々米の倉庫、そして今はコンサートホール。落盤事故の犠牲の上に成り立つ「地下神殿」。

大谷石と、戦争の記憶 1945年7月12日、宇都宮空襲。市街地の6割以上が焼け落ちた廃墟の中で、大谷石の蔵と建物だけが焼け残った。火山灰から生まれた石が、火に強かった理由。

大谷石と、1万年の祈り、大谷観音と石仏の物語 1万1000年前の縄文人の痕跡から、弘法大師が一夜で彫ったという伝説の千手観音、そして戦後の平和観音まで。同じ岩壁が、1万年以上にわたって人間の祈りを受け止めてきた。

大谷石と、スイス人が見た夢、カトリック松が峰教会 スイス人建築家マックス・ヒンデルが、故郷の大聖堂を夢見ながら大谷石で建てた教会。宮沢賢治の童話から生まれたカエルのガーゴイルと、空襲を耐えた石の壁。

大谷石と、蔵の町、関東平野を覆った石の文化 江戸の火事、鬼怒川の水運、東京オリンピック、三つの転換点で辿る、板蔵から石蔵、そしてコンクリートへの変遷。大名の城の石が、庶民の蔵の石になった「民主化」の歴史。

大谷石と、現代の復活、なぜ今また大谷石が選ばれるのか 調湿効果という「呼吸する石」の再発見、地下空間で生ハムを熟成させる意外な活用法、そして2018年の日本遺産認定。一度は忘れられた石が、今静かに戻ってきている。

この特集を通して、一つの石が歩んできた時間の長さを感じてもらえれば幸いです。