木目のようにも、川の流れのようにも見えるその模様が、この石最大の特徴である。一枚一枚のスラブに二つと同じ模様が現れないため、施工の際には現物を見て選ぶことが勧められるほど、個体差の大きい石でもある。
鉱物学的には、複雑な地殻変動と再結晶を経て生まれた片麻岩(ミグマタイト)に分類され、厳密には花崗岩ではない。インド南部タミルナドゥ州、マナッパライやトーガイマライ(カルール県)周辺の採石場から切り出され、キッチンカウンターや床材・壁材として、アメリカやヨーロッパを中心に広く流通している。
だが、この石の名前をよく見ると、少し奇妙なことに気づく。「コロンボ」という響きから、多くの人はスリランカの首都を連想するかもしれない。しかし実のところ、この名前の生まれ故郷は、この石が採れるインドでも、スリランカでもなく、はるか遠く、地球の反対側にある。

名前の起源、ブラジルの「淡水の海」
「ジュパラナ」という言葉は、ブラジル南東部エスピリトサント州にある実在の湖、ラゴア・ジュパラナンに由来する。
先住民トゥピ族の言葉で「淡水の海」を意味するこの名は、川のように長く曲がりくねった、ブラジル最大級の淡水湖を指して名付けられたものだった。
全長26キロ、最大幅5.5キロ、水深21メートルにも及ぶこの湖は、ドーセ川水系につながる海岸沿いの潟湖群の中でも最大のもので、湖畔には皇帝の島と呼ばれる小島も浮かんでいる。
1860年には皇帝ドン・ペドロ2世が、1954年には大統領ジェトゥリオ・ヴァルガスがそれぞれこの島を訪れたという記録も残る、ブラジルでも名の知れた景勝地である。この湖の近郊で採石された、波打つような縞模様を持つ片麻岩に「ジュパラナ・クラシコ」という商品名がつけられた。一般に、これが「ジュパラナ」を名乗る御影石の最初の例とされている。

地理から切り離された名前
ところが、この波打つ縞模様のデザインがあまりに市場で好評を博したため、以後の展開はやや奇妙な方向へ進んでいく。似たような縞模様を持つ石であれば、産地がどこであろうと「ジュパラナ」を名乗るようになったのである。
ゴールデン・ジュパラナ、バイーア・ジュパラナ、アフリカン・ジュパラナ、そしてインディアン・ジュパラナ。これらの大半は、ブラジルの湖ジュパラナンとは何の地理的関係もない。西オーストラリアで採れる石にまで「オーストラル・ジュパラナ」の名がつけられている例もあり、現地では「ブルース・ロック」という全く別の地名でも呼ばれている。
今では「ジュパラナ」を冠する御影石は数十種類にのぼり、実際にブラジルのその湖の近くで採れているものは、そのうちのごく一部にすぎないとさえ言われている。産地よりも模様のほうが、この名前の資格を決めているのである。つまり「ジュパラナ」は、いつしか特定の場所を指す固有名詞であることをやめ、波打つ縞模様を持つ石全般を指す、いわば一般名詞として石材業界に定着していったことになる。

「コロンボ」とは何か
では「コロンボ」とは何を指すのか。実はこの点についても、確かな記録は見当たらない。ブラジル産の御影石には、コパカバーナやモンテカルロなど、実際の産地とは無関係に、異国情緒を漂わせる地名や人名が装飾的に付けられる例が数多くある。
ケニアの都市名を冠しながら実際にはブラジル産という「モンバサ」という御影石さえ存在するほどだ。「コロンボ」もおそらく同じ発想で、語感の良さだけを頼りに選ばれた言葉なのだろう。少なくとも、スリランカの首都コロンボとの直接的なつながりを示す記録は、どこにも見つからない。
石材業界では、こうした商品名について、そもそも厳密な由来が記録として残されていないことも珍しくない。


インドが受け継いだ、地理なき名前
こうして生まれた「ジュパラナコロンボ」という名前は、ブラジルの湖からも、スリランカの首都からも、実質的には何の関係もない。それでもなお、タミルナドゥ州で採れる、波打つ縞模様を持つこの石は、世界市場に受け入れられやすいという理由だけで、この名前を受け継いで輸出され続けている。
輸出資料や販売サイトを見ても、なぜ「コロンボ」なのかを説明したものは一つも見当たらない。誰も由来を気にせず、誰もが名前だけを使い続けているのである。それは決して珍しいことではなく、むしろ石材業界の名付けにおいては、ごくありふれた成り行きだと言えるのかもしれない。
トゥピ族の言葉で、蛇行する広大な淡水湖を指して名付けられた「淡水の海」という言葉は、いつしかその地理から切り離され、幾つもの大陸を渡り歩いた末に、ブラジルの湖から1万4000キロ以上も離れたインドの畑の下から切り出される、赤みがかったベージュの石の名前として、今日も静かに使われ続けているのである。



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