-
大理石の物語
【大理石の物語 17】ジュラ・マーブル 1億6000万年前の海が床になる日
バイエルン州のホテルのロビーを歩く。 ベージュがかった柔らかい色調の床。よく見ると、表面に黒っぽい染みのような模様がある。 それは化石だ。 1億6000万年前の熱帯の海に生きていた生き物の、石になった残骸だ。 私たちは毎日、恐竜時代の海の底の上を... -
大理石の物語
【大理石の物語 16】スフィンクスの鼻はナポレオンが壊した、は嘘だった
エジプト、ギザの砂漠に鎮座する大スフィンクス。 全長73.5メートル、高さ20メートル。世界最大の一枚岩彫刻のその顔には、鼻がない。 「ナポレオンが大砲で撃って壊した」。学校でそう習った、旅行ガイドにそう書いてあった、という人は多い。エジプト現... -
大理石の物語
【大理石の物語 15】アラベスカート・コルキアと、 建築家が石を選ぶ瞬間
建築家が一枚の石の前に立つ瞬間がある。図面の上ではただの「白い大理石」でしかなかったものが、実物のスラブとして目の前に置かれたとき、そこに走る模様の唯一無二さに、選ぶ側の呼吸が一瞬止まる。 イタリアで切り出される大理石の中には、そうした瞬... -
大理石の物語
【大理石の物語 14】採石場の男
石を“掘る”のではなく、“出会う”という仕事 カッラーラの山には、名前のない男がいた。 みんなが彼を「石の男」と呼んだ。彼自身も、もうその名前しか覚えていなかった。 イタリア・カッラーラの採石場。白い山肌は遠くからでも光って見える。 夜明け前、... -
大理石の物語
【大理石の物語 13】白き神の皮膚 ビアンコカララ神話
大理石はどこから来たのか。採掘者が山を掘り、彫刻家がノミを振るう。しかしその前に、石そのものの物語がある。何千万年という時間が、一塊の岩に刻み込んだ神話だ。 1、誕生 太初、海があった。 神々はまだ眠っていた。眠りながら呼吸し、その呼吸が波... -
大理石の物語
【大理石の物語 12】バチカンの「ふんどし画家」事件、ミケランジェロの復讐と、弟子の悲劇
ミケランジェロが4年かけて完成させたシスティーナ礼拝堂の天井画は、世界を驚かせた。 そして25年後、《最後の審判》は、世界を怒らせた。 「裸が多すぎる。聖なる場所に相応しくない。公衆浴場か酒場に飾るべきだ」 そう言い放ったのは、教皇の儀典長だ... -
大理石の物語
【大理石の物語 11】ナポレオンが盗んだ大理石たち、ルーヴルの名作はいかにして「略奪品」になったか
ルーヴル美術館を訪れた人は、その圧倒的なコレクションに息をのむ。 古代ギリシャ彫刻、ルネサンスの傑作、フランドル絵画。なぜこれほどの作品がパリに集まったのか 答えはシンプルだ。ナポレオンが盗んだからだ。 ジャック=ルイ・ダヴィッド《執務室の... -
大理石の物語
【大理石の物語 10】ダビデ像はなぜ「小さく彫られた」のか、ミケランジェロは意図してそう彫った
フィレンツェのアカデミア美術館を訪れた人が、必ずひそひそと口にする話題がある。 高さ5メートル17センチ。彫刻史上最高傑作のひとつに数えられる完璧な肉体。しかしその「あの部分」は、体のスケールに対して明らかに小さい。 笑い話ではない。これには... -
大理石の物語
【大理石の物語 9】トレビの泉のコイン伝説、「戻れる」はいつ誰が作ったのか
ローマを訪れた旅行者は、ほぼ必ずここへ来る。 そして後ろを向き、肩越しにコインを投げる。 「もう一度ローマに戻れる」その言い伝えを信じて、毎日何万人もの人がコインを泉に沈めていく。年間に集まるコインは140万ユーロ(約2億円)を超える。 では、... -
大理石の物語
【大理石の物語 8】モアイはなぜ海を向いていないのか
「モアイ像は海を見ている」 そう思っている人は多い。孤島の海岸に並んで立つ石の巨人たちが、果てしない太平洋を見渡している。そのイメージはあまりに強烈で、世界中に広まっている。 だが、これは嘘だ。 ほぼすべてのモアイは、海に背を向けて立ってい... -
大理石の物語
【大理石の物語 7】パンテオンの穴 2000年間、雨ざらしでも水が溜まらない理由
ローマのパンテオンを初めて訪れた人は、まず天井を見上げる。 そして必ず同じ疑問を口にする。 「あの穴、ガラスが入ってるの?」 入っていない。直径9メートルの穴は、2000年間ずっと空に開いたままだ。雨が降れば雨が落ちてくる。嵐の日には滝のように... -
大理石の物語
【大理石の物語 6】コロッセオの石が消えた理由
ローマのコロッセオを訪れると、誰もが同じ疑問を抱く。 「なぜ、こんなにボロボロなのか?」 外壁の半分が消え、内部はむき出しのコンクリートが剥き出しになっている。地震のせいだと思うかもしれない。だが真実はもっと皮肉だ。コロッセオの石は、ロー... -
大理石の物語
【大理石の物語 5】ラオコーン群像が発見された瞬間
1506年1月14日、ローマ。 農夫がブドウ畑を掘っていると、巨大な大理石像が土の中から姿を現した。知らせを受けたミケランジェロは、仕事を投げ出して現場へ駆けつけた。彼がそこで目にしたのは、人類史上最高の彫刻のひとつだった。 ラオコーン群像(バチ... -
大理石の物語
【大理石の物語 4】エルギン・マーブル ~200年越しの石の奪還戦争~
大英博物館の展示室の中で、最も多くの人が足を止める場所がある。「パルテノン・ギャラリー」だ。 そこに並ぶ大理石の彫刻群 エルギン・マーブル は、本来ならアテネのアクロポリスに刻まれているはずだった。 なぜ、ギリシャの石がロンドンにあるのか。... -
大理石の物語
【大理石の物語 3】ヴィーナス・デ・ミロ ~パロス大理石に宿る謎の美神~
ミロス島で発見された奇跡の彫刻 1820年、ギリシャのミロス島。 土の中から現れたのは、腕を失った女神だった。 それが、『ヴィーナス・デ・ミロ』(アフロディーテ像)である。 高さ約2.04m、パロス産の大理石で彫られたヘレニズム期のこの像は、現在もル...