19世紀末、地元の活動家ガリレオ・パッラはそう言った。
世界で最も美しい石を産む町が、世界で最も過激な政治思想の拠点でもあった。
ミケランジェロが愛した白い山の麓で、なぜアナキズムが根付いたのか。
その答えは、石を掘ることの過酷さの中にある。

石を掘る者たちの生活
カッラーラの採石場で働くことは、命がけだった。
19世紀末のニューヨーク・タイムズはこう報じた。
「カッラーラの採石場労働者は、イタリアで最も顧みられない労働者だ。 多くは元受刑者か逃亡者で、他に仕事を見つけられない者たちだ。 採石場の仕事は筋肉と忍耐さえあれば雇ってもらえた、出自を問わず」。
落石、崩落、粉塵、採石場での事故は日常だった。
大理石の粉塵が肺に積み重なり、珪肺症で若くして死ぬ者も多かった。
重さ数トンのブロックが滑り落ちれば、そこにいた者は即死だ。
賃金は低く、休日はなく、労働時間に上限はなかった。
地元の石工がこう言ったとされる言葉が残っている。
「カッラーラの大理石は白くない。人間の血で赤く染まっている」。

イタリア最初のアナキスト集団はカッラーラで生まれた
1885年
ベルギーとスイスから追放された過激な革命家たちがカッラーラにやってきた。
彼らはここに居場所を見つけた。
過酷な労働条件に怒る石工たちが、既存の秩序への根本的な否定という思想に共鳴したからだ。
こうしてカッラーラにイタリア初のアナキスト集団が生まれた。
石切り場の労働者と革命家の思想が結びつき、アナキズムはカッラーラの文化に深く根ざしていった。
1894年1月
カッラーラを含むルニジャーナ地方で大規模な労働者蜂起が起きた。
「ルニジャーナの反乱」と呼ばれるこの蜂起は、イタリア政府によって軍隊で鎮圧されたが、アナキズム運動の炎を消すことはできなかった。
むしろ弾圧が、怒りをさらに燃え上がらせた。
国王を暗殺した男の記念碑
カッラーラのトゥリリアーノ墓地前の庭園に、ガエターノ・ブレシという男の記念碑がある。
ブレシはカッラーラの織工の息子で、後にアメリカへ渡りニュージャージーの繊維工場で働いた。
1900年7月29日、彼はイタリアに戻り、モンツァでイタリア国王ウンベルト1世を拳銃で暗殺した。
理由は単純だった。
1898年、ミラノで労働者のデモ隊に軍が発砲し、数百人が死傷した(「ミラノの虐殺」)。
国王はその鎮圧を指揮した将軍を勲章で称えた。
ブレシはその報復として国王を殺した。
ブレシは終身刑を宣告され、1年後に獄中で死亡した。
自殺とも、看守による殺害とも言われている。
カッラーラは彼を英雄として記念碑に刻んだ。
国王を暗殺した男の記念碑が、今もこの街の墓地に立っている。


1968年、国際アナキスト連盟がカッラーラで生まれた
20世紀に入ってもカッラーラのアナキズムは衰えなかった。
ファシズムの時代には地下に潜り、第二次大戦中は抵抗運動の拠点となった。
戦後の社会不安の中でも、石工たちの急進的な伝統は生き続けた。
1968年、世界が革命の熱気に包まれたその年、カッラーラで国際アナキスト会議が開催された。
この会議から「国際アナキスト連盟(IFA)」が生まれた。
世界のアナキスト組織をつなぐ国際ネットワークの発祥地が、大理石の町カッラーラだ。
イタリアのアナキストたちが深く敬愛するサッコとヴァンゼッティ。
1920年代にアメリカで冤罪によって処刑された二人のイタリア人アナキストはカッラーラ出身ではないが、カッラーラには彼らの名を冠した広場がある。
カッラーラはイタリア全土のアナキズムの精神的な聖地となっていた。

8時間労働を勝ち取った石工たち
カッラーラの石工たちの闘いは、具体的な成果も生んだ。
街の中心部には、「8時間労働の獲得」を讃える大きな記念碑がある。
世界の労働運動が「1日8時間労働」を求めて闘っていた時代、カッラーラの石工たちもその先頭に立った。
彼らが勝ち取ったその権利は、石工の名誉として今も記念碑に刻まれている。
また、ある有名な広場の石畳は、労働争議の最中に石工たちが抗議の意を込めて敷いたものだという話も残っている。
白い石と、赤い思想
カッラーラは今日、大理石と、アナキズムと、ラルド(豚脂)の三つで有名だと言われる。
この三つがどれほど深く絡み合っているかを知れば、カッラーラという街の本質が見えてくる。
採石場の過酷な労働がアナキズムを育て、
アナキズムが労働運動を強化し、
労働運動が石工たちの権利を守った。
そして採石場で働く者たちのカロリー補給として生まれたのがラルド・ディ・コロンナータ、塩漬けの豚脂だ。
ミケランジェロが愛し、世界中の宮殿と神殿と美術館を飾った白い石。
その同じ石を掘った男たちが、国家と資本への根本的な反抗を育てた。
白い石と赤い思想は、同じ山から来ている。
カッラーラでは石までアナキストだ。
その言葉の意味が、今ならわかる気がする。

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