そしてその希少な青の中でも、最も美しく、最も希少で、最も求められる石がある。
アズール・マカウバス、ブラジル・バイーア州マカウバス市近郊で採掘される青い石英岩(クォーツァイト)だ。
スカイブルーからロイヤルブルー、インディゴまで、青の波が石の表面を流れるように走る。白い石英の脈が時に金色やベージュの温かみを加える。
「世界で最も威信のある青い石」と称されるこの石は、採掘量の希少さと美しさで、同じブラジルのアズール・アクアマリーナ(第88話)を超える特別な地位を持つ。
しかしこの石には、名前をめぐる小さな謎がある。

「大理石」ではなく「石英岩」、名前の逆説
アズール・マカウバスは世界市場で「大理石(マーブル)」として流通することが多い。しかし地質学的には大理石ではなく、石英岩(クォーツァイト)だ。
大理石は石灰岩が熱と圧力で変成したもの。石英岩は砂岩が熱と圧力で変成したものだ。
出発点が違う。砂岩に含まれる石英粒子が再結晶化し、融合して、非常に密度の高い硬い岩石になる。それがクォーツァイトだ。
ロッソ・アリカンテ(第47話)、インペリアル・グリーン(第54話)と同じ構図、「大理石」という名前で売られているが、厳密には違う石。石材業界では見た目の類似と商業的な慣行から、こういうことが頻繁に起きる。
しかしアズール・マカウバスを「大理石より劣る」と思う必要はない。むしろ逆だ。
クォーツァイトは大理石より硬く、酸に強く、耐久性が高い。花崗岩よりも硬いとも言われ、ガラスより傷がつきにくい。
「大理石の美しさと花崗岩の強さを兼ね備えた石」、それがアズール・マカウバスの実態だ。

青の正体「ドゥモルティエライト」という鉱物
アズール・マカウバスの青の正体は、ドゥモルティエライト(Dumortierite)という鉱物だ。
ドゥモルティエライトは珪酸塩鉱物の一種で、1881年にフランスの古生物学者ウジェーヌ・エクトール・ドゥモルティエの名にちなんで命名された。19世紀のフランスの学者の名前が、ブラジルの青い石の色の正体だ。
この鉱物はブラジルのバイーア州と、南アフリカの一部地域にしか存在しない。ドゥモルティエライトはブラジルと南アフリカのわずかな地域にしか存在しない極めて希少な鉱物だ。
アズール・マカウバスに含まれるドゥモルティエライトの割合は約12〜15%、この希少鉱物が石に均一に分布することで、あの独特の青が生まれる。
10億年前(先カンブリア時代)、バイーア州の地域はラグーンと海岸環境だった。砂岩が堆積し、その中にドゥモルティエライトが混入した。
その後、地球の地殻変動の力、熱と圧力が砂岩を石英岩に変えた。10億年の時間が、19世紀のフランスの学者の名前がついた鉱物を、ブラジルの山の中に閉じ込めた。
採掘は8メートルの「壁」との戦い
アズール・マカウバスの採掘は、決して容易ではない。
最初はすべてが非常に困難だった。採掘地へのアクセスは不安定で、石の極端な硬さが作業を困難にし、岩脈の形状約8メートル厚の石英岩の脈が岩山に埋め込まれているも助けにならなかった。しかしアズール・マカウバスの息をのむような美しさが、続ける力を与えてくれた。
採掘地はバイーア州マカウバス市の西に広がる約30キロの地帯に分布している。しかし実際に採掘可能な場所は限られており、採れるブロックのサイズは中〜小規模だ。
石英岩の硬さゆえにダイヤモンドワイヤーソー(第66話参照)が必須で、採掘コストはビアンコカララや通常の大理石を大幅に上回る。
それでも採掘業者が続けるのは、その美しさへの需要が世界中から絶えないからだ。

「嵐の海」と「青い砂漠」、二つの顔
アズール・マカウバスのスラブを見る人は、二つの異なるイメージを語る。
ある人は「嵐の海のよう」と言う。青い波が石の表面を横切り、白い砕波が飛沫を上げる。その動きがある模様が、荒れた海面を連想させる。
ある人は「青い砂漠のよう」と言う。砂丘が風に形を変えるように、石の模様が方向性を持って流れる。乾燥した砂漠の抽象的な景観に見える。
同じ石を見て、海を見る人と砂漠を見る人がいる。この石が持つ模様の「読み方の多様性」が、世界中のデザイナーを魅了し続けている理由のひとつだ。
ブックマッチ(左右対称に二枚を向かい合わせる施工法)にすると、石の模様が「V字型」や「ダイヤモンド型」のパターンを作る。左右対称になった青い波は、まるでロールシャッハテストのインクのように、見る人それぞれの想像を引き出す。


大理石より強く、大理石より美しい
アズール・マカウバスの石英岩としての物理的特性は、大理石を大幅に上回る。
硬度はモース硬度7、大理石の3〜4を大きく超え、花崗岩に匹敵する。ガラスの硬度が5.5なので、ガラスより硬い。酸に強く、ビアンコカララのような大理石ではレモン汁でさえエッチング(表面の腐食)を起こすのに対し、アズール・マカウバスはほぼ影響を受けない。キッチンカウンターとして使った場合、ワイン、酢、柑橘類の果汁、いずれも大理石ほど気にしなくていい。
「大理石の美しさ、花崗岩の強さ」マーケティングの言葉ではなく、これは物理的な事実だ。希少な青の美しさと、実用的な耐久性を兼ね備えた石は、世界の高級建築とインテリアで最も求められる素材のひとつになった。

10億年前の海底から、現代のキッチンへ
アズール・マカウバスは「大理石の物語」シリーズに登場した石の中で、最も古い時代に生まれた石のひとつだ。10億年前、恐竜どころか、多細胞生物すら地球に現れていない時代の海底の砂が、今日のキッチンカウンターになっている。
10億年前のラグーンの砂が石英岩になり、
19世紀のフランスの学者の名前がついた鉱物が青に染め、
21世紀のブラジルの採石場で掘り出され、
世界のデザイナーが「嵐の海」か「青い砂漠」かを議論しながら使う。
次話(第90話)では、同じバイーア州から来る別の青い石アズール・バイアを語る。こちらは「御影石」として売られているが、実は御影石でも大理石でもない石だ。




















