【大理石の物語 74】ビアンコカララと、石の世界が集まる場所、マルモマック

毎年9月の終わり、ヴェローナに世界が集まる。


ロミオとジュリエットの街(第28話)として知られるこの北イタリアの都市が、4日間だけ「石の世界の首都」になる。
マルモマック(MARMOMAC、正式名称MARMO+MAC)
世界最大の石材・石材加工技術の国際見本市だ。

2024年の開催では140か国以上から5万人を超える来場者が訪れ、55か国から1,485社が出展した。
展示面積7万6000平方メートル、東京ドームより広い会場に、世界中の石材業者、建築家、インテリアデザイナー、採石業者、機械メーカーが一堂に会した。

この場所で、ビアンコカララの「現在」が決まる。

ヴェローナと石の2000年


マルモマックがヴェローナで開かれるのは偶然ではない。

ヴェローナは古代ローマ時代から石材産業の中心地だった。
第28話で書いたロッソ・マニャボスキ(ロッソ・ヴェローナ)の産地ヴァルポリチェッラはヴェローナの北に位置し、ガヴィの凱旋門やヴェローナ・アレーナ(ローマ円形競技場)はこの地の石で作られた。
石とヴェローナの関係は、ローマ時代から2000年続いている。

現代のヴェローナ近郊、サンタンブロージョ・ディ・ヴァルポリチェッラからアッフィ、カヴァイオンにかけての地域には、地元産と輸入石材を加工する企業が数百社集積している。
ヴェローナ地域は石材の国内輸出総量の25〜30%を占める。
国内最大の石材加工産業集積地だ。 マルモマックはこの産業集積地の中心から生まれた。

1961年、小さな展示会が世界最大になった


マルモマックの歴史は1961年に始まる。
サンタンブロージョ・ディ・ヴァルポリチェッラで開かれた小さな地方展示会が出発点だ。
当初はイタリア国内向けの石材見本市に過ぎなかった。

しかし1992年にヴェローナのフィエラ(見本市会場)に移転し、国際化が加速した。「
マルモ(大理石)」と「マック(機械・技術)」を組み合わせた名前が示すように、石材そのものだけでなく、採石・加工・施工の最新技術も一堂に展示する総合見本市として成長した。

60年以上の歴史の中で、マルモマックは石材業界の「世界標準」を決める場所になった。
ここで発表されるデザイントレンド、ここで行われる商談、ここで公開される新技術が、翌年の世界中の建築とインテリアに影響を与える。

140か国が集まる理由


なぜ世界140か国以上の石材業者がヴェローナに集まるのか。

第一の理由は「イタリアのブランド力」だ。
ビアンコカララに代表されるイタリアの石材は、世界の石材市場で圧倒的なブランド価値を持つ。
「イタリア産」というだけで他国産より高い価値を認められる。

その価値の源泉はミケランジェロ以来の数百年の歴史にある。
マルモマックはそのブランドの「本家」が主催する見本市だ。

第二の理由は「商談の効率」だ。
一か所に業界全体が集まることで、産地から施工まで全バリューチェーンを4日間でカバーできる。
カッラーラの採石業者、ヴェローナの加工業者、ギリシャの白大理石メーカー、トルコのベージュ石材業者、インドの緑の石の輸出業者。
このシリーズに登場した産地の多くが、マルモマックに出展している。

第三の理由は「トレンドの発信」だ。
マルモマックで発表されたデザインが世界の高級ホテルやオフィスビルの内装トレンドになる。
建築家とデザイナーがここで石を「発見」し、プロジェクトに採用する。

イタリアン・ストーン・シアター、石を「演じる」


マルモマックの目玉企画のひとつが「イタリアン・ストーン・シアター(Italian Stone Theatre)」だ。

世界の著名建築家やデザイナーがイタリアの石材を使ってインスタレーション作品を制作し、会場内に展示する。
石が「建材」としてではなく「芸術素材」として語られる場だ。
過去にはザハ・ハディド事務所、ダニエル・リベスキンド、隈研吾なども参加してきた。

ビアンコカララを含むイタリアの石材が、現代建築の最前線でどう使われているかを示すショーケースとして機能している。
第71話で書いた「現代アートとビアンコカララ」の延長線上に、マルモマックがある。

日本とマルモマック


日本の石材業者や商社もマルモマックに参加してきた。
長年にわたって現地の採石業者や加工業者と直接商談を行い、日本市場向けの石材を調達してきた。

このシリーズで登場したほぼすべての石、ビアンコカララ、ロッソ・レバント、ノルウェジャン・ローズ、ローズ・オーロラなどは、マルモマックのような国際見本市を通じて世界市場に届けられる石材流通の網の中にある。
石が採石場から日本のバスルームや商業施設の床まで届く道筋に、マルモマックは欠かせない結節点として存在している。

山から始まり、ヴェローナを経て、世界へ


このシリーズ(第61話〜第74話)でビアンコカララの物語を追ってきた。

2200年前に奴隷が掘り始めた山(第64話)
22歳のミケランジェロが馬で来た山(第61話)
アナキストが権利のために戦った山(第62話)
ラルドを食べた労働者たちの山(第63話)
ナポレオンの妹が産業を育てた山(第65話)
ダイヤモンドワイヤーソーが削り続ける山(第66話)
環境活動家が守ろうとしている山(第67話)
その石が届いた世界の名建築(第68話)
ファシストが宣伝道具にした山(第69話)
戦後に復活し芸術家を引き寄せた山(第70話)
現代アートの聖地になった山(第71話)
高級ホテルのバスルームを飾る山(第72話)
中国が爆買いした山(第73話)

そのすべての石が、世界の石材市場と出会う場所がマルモマックだ。

カッラーラの白い山は今日も削られている。
その石は今日もヴェローナを経由して世界へ旅立っている。

2200年前から続く旅は、まだ終わっていない。

ビアンコカララについて詳しく見る

▶ ビアンコカララとはどんな石か(いしらべ)

▶ ビアンコカララの商品ページ(建材ネット)

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