【大理石の物語 88】アズール・アクアマリーナと、ブラジルが石の大国になった理由

大理石といえばイタリア、その常識が、1970年代に静かに揺らぎ始めた。

イタリア人たちがブラジルへ渡ったのだ。

ブラジル南東部、エスピリト・サント州カシェイロ・ド・イタペミリン、「装飾石材の全国首都」と呼ばれるこの街の周辺で、1970年代にイタリア移民たちが白い大理石の鉱床を発見した。イタリアから採掘技術、機械、職人の技が持ち込まれ、ブラジルの石材産業が本格的に動き始めた。
それ以降、探索者たちはエスピリト・サントからブラジル北東部へ、内陸部へと調査を広げ、次々と新しい石の鉱床を発見していった。

その探索の過程で出会った石のひとつが、アズール・アクアマリーナだ。
アズール・アクアマリーナ スラブ材

「アクアマリン」という宝石と同じ色


アズール・アクアマリーナ、スペイン語・ポルトガル語で「アクアマリンの青」を意味するこの大理石は、エスピリト・サント州カシェイロ・ド・イタペミリン近郊で採掘される。

アクアマリンとは、ベリルという鉱物の一種で、海水のような澄んだ青緑色を持つ宝石だ。3月の誕生石として知られ、「幸運をもたらす」「船乗りを守る」という言い伝えを持つ。
その宝石と同じ色を持つ石灰岩、それがアズール・アクアマリーナだ。

淡い水色からターコイズブルーの地色に、白と薄緑の曲線状の脈が流れるように走る。脈の動きは川の流れのように有機的で、静かな熱帯の水面を思わせる。
中国市場では「碧海蓝天(ビーハイ・ランティエン)碧い海と青い空」「天空之镜(ティエンコン・ジー・ジン)空の鏡」と呼ばれている。東洋の感性が、この石の詩的な本質をとらえている。

なぜブラジルに青い大理石があるのか


大理石の世界において、「青」は極めて希少だ。

白やベージュ、グレー、黒の石は世界中に数多く存在する。しかし青い色調を持つ石はごく限られている。
アズール・アクアマリーナが産出するブラジル・エスピリト・サント州は、その数少ない場所のひとつだ。

先カンブリア時代(約5億年以上前)に形成された古い岩盤の中で、長い時間をかけて育まれた独特の色彩が、この石の青を生み出した。 さらに興味深いのは、同じエスピリト・サント州から、白、グレー、ベージュ、クリームなど多彩な色調の石が産出されることだ。

エスピリト・サント州はブラジル石材産業の中心地であり、国内石材生産の約40%を担い、加工・仕上げ能力の約70%が集中している。その豊かな地質の中に、アズール・アクアマリーナのような希少な青い石も静かに眠っていた。
世界でも数少ない「青い天然石」のひとつとして、アズール・アクアマリーナは特別な存在なのである。
アズール・アクアマリーナ スラブ材

ブラジルという石の宝庫


アズール・アクアマリーナはブラジルの石材の多様性の一端に過ぎない。次話(第89話)のアズール・マカウバス(石英岩)、第90話のアズール・バイア(シャイナイト)どれもブラジルという国の地質的な豊かさから生まれた石だ。

ブラジルは国土面積で世界第5位。
その広大な国土の地下には、先カンブリア時代から現代にかけての地質の歴史が積み重なっている。熱帯雨林の下に、誰も掘り当てていない石の鉱床がまだいくつも眠っているかもしれない。

アズール・アクアマリーナの青は、その可能性の一つが地上に現れた姿だ。
宝石アクアマリンと同じ色を持つ石が、世界に届けられている。
アズール・アクアマリーナ スラブ材

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